アジサシ:まれな訪問者の活動

アジサシ(Sterna hirundo)が、赤みがかった魚を赤いくちばしに横向きにくわえて飛ぶ。翼を上げ、背景は緑と茶。
アジサシ: Sony A1 + 400mm f/2.8 + TC2x、800mmで – F7.1 – 1/1600 – ISO800

目次:

  • 短い版 – アジサシ撮影行
  • ルクセンブルクの自然保護区:アジサシのすみか
  • アジサシ撮影での天気と光の条件
  • 繁殖期のアジサシのふるまい
  • アジサシ撮影の技術的な難しさ
  • まとめ:アジサシ – 優雅な飛翔の名手
  • ドイツにおけるアジサシへの脅威
  • アジサシ(Sterna hirundo)の個体数
  • アジサシ(Sterna hirundo)の概要

– 短い版 – アジサシ撮影行

アジサシ(Sterna hirundo)は、海岸でも内陸でも繁殖する優雅な鳥です。ルクセンブルクでは、自然の繁殖地が少なくなったこの種に新しい繁殖場所を用意するため、人工のいかだ島を備えた自然保護区がつくられました。ドイツ・フランス・ルクセンブルクの三国国境での撮影行で、繁殖期のアジサシのふるまいを観察し、写真に収めることができました。とくに印象に残ったのは、ひなに餌を運ぶときの空中での身のこなしと、侵入者に対する防御のふるまいです。

アジサシの撮影には技術的な難しさがあります。とりわけ、白い羽と黒い頭の羽との対比が大きいためです。世界全体の個体数は安定しているものの、ドイツではアジサシは絶滅の危険が高い種とされており、人工の営巣場所のような保護の取り組みが欠かせません。

モーゼル三国国境でのアジサシ撮影行

ルクセンブルクの湿地で、観察用のブラインドから葦と湖を望む。
ルクセンブルクの野鳥観察ブラインド、薄明のころ – Sony a6700 + Sony 16-50mm f/3.5-f/5.6、16mmで – F3.5 ISO500

ドイツ、フランス、ルクセンブルクの三国国境に、濃い霧がかかっています。私の道のりは、ザールラントの丘陵地を抜け、ドイツとルクセンブルクの自然の境になっているモーゼル川に沿って続きます。この撮影行の目当ては[**アジサシ(*Sterna hirundo*)**](/de/voegel/flussseeschwalbe-sterna-hirundo)です。

ルクセンブルクの自然保護区:アジサシのすみか

ルクセンブルクには小さな自然保護区があり、人工のいかだ島によってアジサシ(*Sterna hirundo*)の繁殖場所がつくられています。この種は内陸で自然の繁殖地を見つけるのが難しく、それはルクセンブルクでもドイツでも変わりません。人工の島はアジサシに守られた繁殖の場を与え、同時に、鳥を乱さずにこの優雅な姿を撮る機会を写真家にも与えています。

アジサシ撮影での天気と光の条件

朝霧のなか、水面をかすめて飛ぶアジサシ。映り込みが見える。
水面すれすれを飛ぶアジサシ: Sony A1 + 400mm f/2.8 + TC1.4x、560mmで – F5 – 1/2500 – ISO2500

この日の天気は気まぐれでした。はじめは霧と霧雨、のちに晴れ間です。私にとっては歓迎すべき手ごたえでした。雲に覆われたことで早朝のやわらかい光が長く続き、アジサシのふるまいに合わせ、機材を調整する時間が増えたからです。

繁殖期のアジサシのふるまい

葦の岸を背に、木の杭にとまる2羽のアジサシ(Sterna hirundo)と、砂利の営巣台にいる幼鳥1羽。
浮かぶ営巣島の木杭にとまるアジサシ – Sony a6700 + Sony 100-400mm f/4.5-f/5.6、355mmで – F6.3 ISO640

繁殖島のひとつの近く、岸の草木にぴったり寄せて撮影の場所を決めました。アジサシにはひなが生まれていました。幼鳥は島のあちこちに散らばって座り、成鳥の何羽かは周りの木の杭にとまっています。ほかの成鳥は、大きな声とくちばしにくわえた小さな魚とともに人工の島へ戻り、ひなに餌を与えていました。魚をくわえたアジサシが戻ってくると、そこから見ものが始まります。幼鳥は体を上へ伸ばし、餌をもらおうと大きな声で鳴くのです。私には、腕をまっすぐ高く上げて自分に気づいてもらおうとする生徒たちの姿が重なりました。

浮かぶ台の上で、くちばしを開けて鳴くアジサシの幼鳥。脚に黄色い標識環がある
餌をもらおうと自分に気づかせるアジサシの幼鳥 Sony A1 + 400mm f/2.8 + TC1.4x、560mmで – F5 – 1/2000 – ISO640

アジサシの空中での身のこなしと給餌

小さな魚をくちばしにくわえたアジサシ(Sterna hirundo)が、翼を高く立てて急旋回する。背景は緑。
獲物をめぐって追いかけ合う2羽のアジサシ – Sony A1 + 400mm f/2.8 + TC1.4x、560mmで – F5 – 1/3200 – ISO800

成鳥のアジサシは、その飛びぶりで見る者を引きつけます。島へ近づくときには、獲物を奪おうとするほかのアジサシによる素早い追いかけ合いがしばしば伴いました。成鳥が進入をいったんやめ、ひなに餌を与える前に島の周りを何周か飛ぶこともあります。給餌のあとは水面すれすれを飛び、くちばしを浸して水を飲みます。写真を撮る者にとっては申し分のない被写体です。

アジサシ(Sterna hirundo)が水面すれすれを飛び、濃い緑の水面をくちばしでつつく。しぶきの跡と映り込みが見える。
くちばしで水面に触れながら低く飛ぶアジサシ – Sony A1 + 400mm f/2.8 – 1/2000 – ISO640
アジサシ(Sterna hirundo)が魚をくわえ、営巣いかだで餌をねだる幼鳥へ向かって飛ぶ
アジサシ(Sterna hirundo)がホバリングしながら、営巣いかだで餌をねだる幼鳥に魚を渡す

侵入者に対するアジサシの防御のふるまい

アジサシ(Sterna hirundo)が急降下して、岸に立つエジプトガン(Alopochen aegyptiaca)を攻撃する。
巣の近くにいるエジプトガンへ急降下するアジサシ – Sony A1 + Sony 100-400mm f/4.5-f/5.6 – 1/2000 – F5.6 – ISO3200

エジプトガンのつがいが繁殖島にやってきて、すぐにアジサシに追い払われました。アジサシは小さな群れになって侵入者へ急降下し、直前でまた上昇して攻撃を繰り返します。エジプトガンはついに引き下がりました。絶え間ない攻撃にさらされ続けるつもりはなかったのでしょう。

アジサシ(Sterna hirundo)の幼鳥が、霧にかすむ灰緑色の森を背に翼を広げて飛ぶ。
アジサシ(Sterna hirundo)の幼鳥が、水しぶきを上げて暗い水面から飛び立つ。下に映り込みが見える。
アジサシ(Sterna hirundo)の幼鳥が暗い水面すれすれを飛ぶ。真下にきれいな映り込みがある。

この日の最後の観察は、幼鳥の何羽かがもう最初の飛行を試していたことでした。水面のすぐ上を飛び、水を飲もうとくちばしを浸したときに、水に落ちてしまうこともあります。まだ不器用なのか、それともわざとなのかは、私にはわかりません。いずれにしても、若いアジサシのようすを眺めているのは楽しいものでした。

アジサシ撮影の技術的な難しさ

アジサシ(Sterna hirundo)が、赤みがかった魚を赤いくちばしに横向きにくわえて飛ぶ。翼を上げ、背景は緑と茶。
獲物をくわえて近づく – Sony A1 + 400mm f/2.8 + TC2x、800mmで – F7.1 – 1/2500 – ISO2500

最初の何枚かを撮ってわかったのは、アジサシの白い羽と黒い頭の羽の対比が、硬い光のもとでは本当に手ごわいということでした。白飛びを避けるには、明るい部分と暗い部分の両方でディテールを出せるよう、露出を丁寧に合わせる必要があります。

アジサシ – 優雅な飛翔の名手

この一日は、アジサシを撮るうえで得るところの多い日になりました。とくに心に残ったのは、給餌のときのふるまいと飛びぶりです。いまのところ申し分のない一枚は撮れていませんが、この優雅な鳥への関心は変わりません。

何を学び、それがアジサシの撮影にどう役立つか

  • 成鳥は定期的に幼鳥へ餌を運ぶ
  • 給餌のときの空中での身のこなし
  • 獲物をくちばしにくわえたまま何周も飛ぶ
  • 獲物を奪うために、アジサシがほかのアジサシを追う
  • 幼鳥にとっての危険に対する防御のふるまい
  • 水を飲むために水面すれすれを飛ぶ
  • 幼鳥の何羽かによる最初の飛行

こうした型を、続く数日のあいだ写真に収めようとしました。そうしてできたのが、あらかじめ型として見分けられるようになったふるまいの写真の数々です。

アジサシ(Sterna hirundo)の幼鳥が、夕方の光のなか、緑の葦の岸を背に飛ぶ。水面に映り込みがある。
アジサシ(Sterna hirundo)が、かすんだ空を背に赤いくちばしを開けて鳴きながらホバリングする。
アジサシ(Sterna hirundo)が翼を鎌のように曲げて横へ傾く。背景はオリーブ色がかった茶。
アジサシ(Sterna hirundo)が翼を広げ、灰色にかすんだ空を背にカメラへ正面から向かってくる。

アジサシ(*Sterna hirundo*)の個体数

アジサシの世界全体の分布

アジサシ(*Sterna hirundo*)の世界全体の個体数は、最大で360万羽と見積もられています。内訳は、地球上のさまざまな地域にわたるものです。

  • ヨーロッパ: ヨーロッパの個体数は、およそ316,000〜605,000の繁殖ペアと見積もられています。ヨーロッパは、とくに海岸において、この種にとって重要な生息地です。
  • 北アメリカ: 北アメリカでは、アジサシはこの40年で大きく数を減らし、70%減となりました。ただし個体数が安定している地域や、増えている地域もあり、この種の適応力がうかがえます。出典 REDLIST
  • アジアとオーストラリア: アジアとオーストラリアでもアジサシは広く分布しており、さまざまな生息環境に適応できる証しです。
  • 南アメリカ: 冬のあいだ、アジサシは南アメリカの海岸沿いからフォークランド諸島まで見られ、その渡りの距離の長さを示しています。

ドイツにおけるアジサシの生息数

ドイツでのアジサシの生息数は、絶滅の危険が高い状態です。世界全体では安定しているにもかかわらず、この国では「絶滅危惧」に分類され、レッドリストに載っています。自然保護団体は、減少を止めるために人工の営巣場所に力を入れています。ただし生息数が安定するまでの道のりは長く、たゆまぬ取り組みが必要です。

ドイツのレッドリスト: アジサシ 絶滅危惧

ドイツにおけるアジサシ繁殖ペアの推移

出典: http://www.dda-web.de & http://www.natura2000-lsa.de

ドイツにおけるアジサシの個体数の推移:1992年から2016年までの繁殖ペアの分析

ドイツのアジサシ個体数の推移は、1996年から2016年にかけて、はっきりとした浮き沈みを見せています。ただし、ここで用いたデータは、分析にどの出典を使うかによって精度の振れが大きいものです。

グラフから読み取れる主な傾向と気づきは次のとおりです。

1. 回復の時期(1996〜2009年):
大きな落ち込みのあと、1996年から個体数の回復が始まりました。この回復は着実に進み、2009年にはおよそ11,000の繁殖ペアという高い水準に達します。この増加が示すのは、実を結んだ保護の取り組みがあったか、繁殖の条件がよくなったことです。人工の繁殖島や生息地での保護策が、この回復を後押しした可能性があります。

2. 再びの減少(2009〜2016年):
2009年の高い水準のあと、ふたたび下降が始まり、それは2016年まで続いて、繁殖ペアの数はおよそ9,000まで下がりました。個体数がふたたび圧力にさらされていることがうかがえます。この減少の原因としては、続いている問題や新しく生じた問題が考えられます。たとえば餌となる資源の変化、人の活動の増加、あるいは繁殖の条件を悪くする環境の変化です。

アジサシ(Sterna hirundo)の概要

雨のなかを飛ぶアジサシ(Sterna hirundo)を横から。赤いくちばしの先は黒く、背景は緑と青。
茂み越しに撮影したアジサシ(Sterna hirundo) – Sony A1 + 400mm f/2.8 + TC1.4x、560mmで – F4.5 – 1/2000 – ISO800

大きさ:
アジサシは体長34〜35cmの、細身で優雅な鳥です。よく似たキョクアジサシとは、やや引き締まった体つき、先が黒い橙赤色のくちばし、そして脚の長さで見分けられます。

特徴:
飛んでいるときは、初列風切の下面にある幅の広い黒っぽい後縁で見分けやすくなります。この特徴と細身の輪郭が、自然写真で好まれる被写体にしている理由です。

分布:
アジサシは海岸でも内陸でも繁殖します。好むのは、平らな島、人の入らない浜、砂州といった静かな繁殖地です。ドイツの海岸ではまだ比較的よく見られますが、内陸では生息数が大きく減っています。理由はさまざまで、生息地の消失や人による撹乱がそこに含まれるのです。

繁殖:
この鳥は、多くは植物の切れ端でできた浅い地上の巣をつくります。ひと腹の卵はふつう2〜3個です。自然の繁殖地がない地域では、種を保つために人工の営巣いかだが使われます。こうした手立ては、適した繁殖地が少なくなった内陸ではとくに重要です。

食べ物:
アジサシの主な食べ物は小さな魚です。急降下して巧みに水からとらえ、ときには昆虫も食べます。

アジサシ(Sterna hirundo)が真っ白な空を背に小さく飛ぶ。翼の先が黒く、切り詰めた構図。
ハイキー撮影 – Sony A1 + 400mm f/2.8 – 1/2000 – ISO1600

FAQ: ルクセンブルクのアジサシ – 三国国境での撮影行

1. なぜアジサシのために人工の島が用意されるのですか。
アジサシは、ルクセンブルクやドイツのような内陸では、自然の繁殖地がわずかしか残っていません。この種の減少に歯止めをかけるため、人工のいかだ島が繁殖場所としてつくられます。安全に繁殖でき、人による撹乱や天敵から守られる場所を用意するためです。

2. アジサシの撮影には、どんな技術的な難しさがありますか。
いちばんの難しさは、アジサシの白い羽と黒い頭の羽の対比にどう対処するかです。とくに硬い光のもとでは、白い羽が白飛びする危険が常にあります。明るい部分と暗い部分の両方でディテールを残すには、それに合った露出設定が必要です。おすすめは、やや暗めに撮ることです。

3. 繁殖期のアジサシのふるまいで、とくに目を引くのは何ですか。
繁殖期のアジサシは、とりわけひなへの給餌のときに見ごたえのある飛びぶりを見せます。さらに、繁殖地を侵入者から激しく守ります。繁殖のコロニーをつくるのは、これも理由のひとつです。こうしたふるまいは、面白い被写体になると同時に、鳥の暮らしをのぞかせてくれます。

4. アジサシの世界全体の個体数はどれくらいですか。
アジサシの世界全体の個体数は、最大で360万羽と見積もられています。この鳥は世界のさまざまな地域に分布しており、まとまった個体数があるのはヨーロッパ、北アメリカ、アジア、オーストラリアです。

5. なぜドイツではアジサシが絶滅の危険が高い種とされているのですか。
ドイツでは、生息地の消失、人による撹乱、そのほかの環境要因により、アジサシは絶滅の危険が高い状態にあります。生息数はおよそ5,700〜6,600の繁殖ペアと見積もられており、種を保つには人工の営巣場所のような保護の取り組みが必要です。

6. 天気と光の条件は、アジサシの撮影にどう影響しますか。
霧や霧雨、日差しが入れ替わる変わりやすい天気は、写真を撮る者に難しさをもたらしますが、利点もあります。薄く雲がかかった空は早朝のやわらかい光を長引かせ、硬い対比に邪魔されずに細部まで写しやすくしてくれるのです。

7. アジサシを観察することから、写真家は何を学べますか。
写真を撮る者は、アジサシのふるまいから多くを学べます。たとえば給餌の作法、防御のふるまい、飛びぶりです。こうした観察は、ここという瞬間にシャッターを切り、鳥のふるまいをありのままにとらえるうえで役に立ちます。

10. アジサシはほかの地域でも撮影できますか。
はい。アジサシは世界の多くの地域に分布しており、とくに海岸と、適した繁殖地のある内陸で見られる鳥です。ヨーロッパ、北アメリカ、アジア、オーストラリア、南アメリカで観察し、撮影できます。