とっておき:野生動物の撮影は悪天候を好む

雨のなかの野鳥撮影をテーマにした、イラストの雑誌表紙。

自然写真の撮影に出かける計画を思い浮かべてください。計画を立てるとき、まず何をするでしょうか。おそらく天気予報を見るのではないかと思います。屋外で何かをするときは、たいていそうするはずです。そこで雨や雪、強い風の予報が出ていれば、がっかりすることが多いものです。何をしようとしていたかによっては、本当にもどかしく感じます。では、そういう日こそカメラを持って外に出るべきだと言われたら、どうでしょうか。
私自身は、こうした変わりやすい条件を野生動物の撮影にとってなかなか面白いものだと感じています。とくに面白いのは、雨や雪が何度か短く止むときです。そういうときには、WildeNaturで思いがけない場面が起こることがあります。

思いがけない生きものの場面

天気が定まらない日ほど、生きものの世界では驚きが多いものです。たしかに光は理想的とは言えません。それでもこうした日には、ふだんなら見逃していたであろう、ほかにない場面に出会えることがよくあります。
そして、その月として4月ほど向いた月があるでしょうか。4月は気まぐれ、と言われるとおりです。

4月の湖に降りしきる雪。手前には芽吹いたばかりの枝、奥にはかすんだ葦と針葉樹林。
撮影:iPhone 13 – 待機場所からの眺め

4月の終わり、写真仲間の@bergsteiger_1911と、雨と雪、氷点下の気温、強い風のなかの自然を体験してみることにしました。選んだのは自然保護区のなかの、屋根のあるブラインドがある場所です。冷たく濡れた自然にまるごとさらされずに済むからです。雨と雪、寒さと風に合う服装をしていても、湿った寒さのなかに何時間もいると、保温下着を着ていてもやはり体の芯にこたえます。年齢のせいかもしれませんし、少しの不便もない冒険などない、というだけのことかもしれません。😋

朝の思わぬつまずきと、予期しない出会い

仲間とは朝5時に落ち合い、決めた場所で13時まで粘りました。私のいちばんの目当ては、ミサゴをレンズに収めることでした。この鳥は北へ渡る途中でここに立ち寄ることが多く、天気が悪い日はとくに、体力を蓄えるためにとどまります。2年前には、この場所で4週間のあいだに11羽の別々のミサゴを撮影できました。
ただ、その日は小さなつまずきから始まりました。待ち合わせ場所へ向かう途中で、熱い紅茶を入れた魔法瓶を家に忘れてきたことに気づいたのです。幸いガソリンスタンドで水とコーヒーを1杯買えました。理想的とは言えませんが、何もないよりはましです。待ち合わせ場所に近づくほど、外の気温は下がっていきました。ニュルンベルクではまだ8°Cありましたが、目的地では2°Cしかありませんでした。冷たい水のボトルより、温かい飲み物のほうが一日を通してよい選択だったはずです。
待ち合わせ場所に着いてから、仲間と暗闇と強い雨のなかを歩いて、屋根のあるブラインドへ向かいました。ところがそこで、迷彩ネットのひとつをなくしていることに気づいたのです。そこで駐車場の方向へ1キロメートルほど引き返し、懐中電灯で地面を探しました。見つかったのは、出発点の少し手前です。雨でぐっしょり濡れたネットが地面に落ちていました。この迷彩ネットは、動物が活動する時間帯に目立たずにいるために欠かせません。日の出前からそこに入っていたのも、そのためです。

ほかにない自然の場面

最初の小さなつまずきのあと、その日の残りは興味深い観察で埋まりました。日の出の1時間前から自分の場所に入っていると、自然が目を覚ましていくようすを体験できます。それは本当に得がたいことです。はじめの静けさは少しずつ破れ、生き生きとした鳥の声で満たされていきました。まさに魔法のような時間です。いたのは水面と葦原のある一帯で、ホシムクドリのねぐらになっている場所でした。雨のせいでホシムクドリが動き出すのが少し遅れ、そのぶん観察に向いた光になったのです。

薄明のなか、葦原から数百羽のホシムクドリがいっせいに飛び立つ。
Sony A1 + 400mm f2.8

雨がしだいに大きな雪片に変わると、目の前で景色が冬の白へ姿を変えていきました。カモの仲間はまもなく背中に雪を載せ、いっぽうで景色は新しい緑と白のなかで輝いていました。

激しい雪のなかを2羽のひなを連れて泳ぐハイイロガン(Anser anser)。親鳥の背中に雪が積もっている。
背中に雪を載せた2羽のカナダガン(Branta canadensis)が、激しい雪のなか灰色の水面を泳ぐ。

観察と、新しい撮影の目標

それだけではありませんでした。岸から岸へ次々と素早く泳いでいくマスクラットのつがいをはじめ、多くの観察のほかにも、心に残る場面がいくつもあったのです。ユーラシアカワウソは何度もなめらかに水にもぐって狩りをし、息をしに水面へ出てはまた消えていきました。ヨーロッパチュウヒのオスは、連れ合いに食べ物を運び、うやうやしく渡していました。とくに劇的だったのはハクチョウです。7時間のあいだずっと、自分の縄張りからガンを追い出し続け、そのあいだ自分の身は顧みませんでした。一度はまったく状況を読み違えました。低い高度でカナダガンを追いかけたときのことです。二羽ともこちらへまっすぐ向かってきて、ガンはぎりぎりで頭上を抜けていきました。翼が空気を切る音が聞こえるほどでした。ハクチョウはその動きができず、危ない回避をとるほかありませんでした。小屋の左を20cmほどで通り抜け、右の翼で若いブナに触れました。幸い、そのブナはまだしなやかだったのです。そして腹を茂みにこすりながら、なんとか不時着しました。このあとハクチョウは、見るからにこたえたようすで、歩いて湖と巣へ戻っていきました。

自然写真のスタイル、4枚の画像
ハイイロガン(Anser anser)が翼を下げ、茶色がかった背景の激しい雪のなかを飛ぶ。
ユーラシアカワウソ(Lutra lutra)が雪のなか、暗い水面から頭と背を出して泳ぐ。舳先のような波が見える。
マスクラット(Ondatra zibethicus)が濡れた毛のまま静かな水面を泳ぐ。ぼけたヤナギの枝に囲まれている。

ほかにも多くを観察できましたが、とくに目についたのはツバメ(Hirundo rustica)でした。乾いた天気のときとは違い、比較的ゆっくり飛んでいたのです。雨と雪が動きを鈍らせていました。もちろんこれを生かして、この速い飛び手を写真に収めたくなりました。とはいえ、ツバメがゆっくり飛んでいるからといって楽になったわけではありません。それでも十分に速く、カメラのピント合わせは雪と雨に対処しなければなりませんでした。ただ、こうしてツバメが新しい撮影の目標になりました。ミサゴがいなくても十分です。😋

ツバメ(Hirundo rustica):撮影の難しさ

降る雪のなかを飛ぶツバメ。青い頭上と赤褐色ののどがよく見える。
ツバメ(Hirundo rustica) Sony A1 + TC1.4 + 400mm f2.8 – 1/2500 + F5 + ISO3200 + 560mm

カメラのAFは厳しい試練にさらされました。光が少なく、大きな雪片や雨で見通しが悪いなか、水面の上を素早く動く小さな被写体をとらえるのは簡単ではありません。私は2台のカメラを持っていきました。いろいろ試すのが好きで、機材の限界を探ってみたいからです。

使ったのは、性能の大きく異なる2台、どちらもハイブリッド機とされるSony A1とSony a6700です。A1には400mm f2.8 GMレンズと1.4倍テレコンバーターを付け、実効焦点距離は560mmになりました。離れた場所から細部まで写すのに向いた組み合わせです。a6700にはSony 200-600mm f5.6/6.3 Gレンズを合わせました。APS-Cのクロップ係数1.5により、この組み合わせでは900mm相当の画角になります。

Sony a6700とSony 200-600mm f5.6/6.3での撮影

青い背と赤褐色ののどをもつツバメ(Hirundo rustica)が、降雪のなか水面すれすれを飛ぶ。
ツバメ(Hirundo rustica)が赤褐色ののどを見せて正面から向かってくる。灰色の空を背に、ぼけた雪片に囲まれている。
ツバメ(Hirundo rustica)が翼を広げ、長い尾羽を伸ばして灰色の空を旋回する。

Sony A1とSony 400mm f2.8 + TC 1.4での撮影

ツバメ(Hirundo rustica)を上から見た旋回中の姿。鋼のような青い背と白い尾の斑が見える。
ツバメ(Hirundo rustica)が翼を立てて水面へ降りていく。下に映り込みが見える。
ツバメ(Hirundo rustica)が尾を広げ、灰青色の水面の上を雪片のなかで飛ぶ。
ツバメ(Hirundo rustica)が体を傾け、さざ波の立つ灰色の水面の上を旋回する。
ツバメ(Hirundo rustica)が正面を向いて飛ぶ。赤褐色ののどと、青い羽毛についた水滴が見える。
ツバメ(Hirundo rustica)が翼を下へ押し下げ、雪片の舞う灰色の水面の上を飛ぶ。

ツバメを撮るときの難しさ

暗く湿った羽: ツバメの暗く湿った羽は光をよく吸い、反射が少なくなります。そのぶん、AFが正確にとらえるのは難しくなるのです。

厳しい条件でのAF: 雨と雪は見通しをさまたげ、ツバメの素早い動きはAFに速く正確な反応を求めます。Sony a6700ではAFが降る雪や雨のほうに合ってしまうことが多く、Sony A1はその影響を受けにくいものでした。

小さなファインダー: Sony a6700のファインダーは小さく解像度も低いため、光の条件が悪いなかで速い鳥を追い続けるのは難しくなります。

フルサイズとAPS-C: 近い被写体(最短5m)を撮るなら、フルサイズのSony A1に560mmの焦点距離を合わせたほうがやりやすくなります。ファインダーが大きく、余裕があるからです。これに対してAPS-C機と900mm相当の画角では、被写体をファインダーに収め続けるのがより難しくなります。

ブラックアウトフリーの撮影: Sony A1では連写中もブラックアウトがないため、飛ぶ鳥をシャッターを切りながら見続けられるのです。Sony a6700では残念ながらそうはいきません。

鳥認識モード: どちらのカメラにも鳥認識モードがあり、光の条件がよければ申し分なく働きます。これほど天気が悪いと、どちらのカメラも限界に達し、a6700のほうが影響を強く受けました。

機材の重さ: 三脚なしでカメラ2台とレンズを扱うと、しばらくすると腕にかなりこたえます。Sony a6700とSony 200-600mm f5.6/6.3 Gの組み合わせは、Sony A1にTC 1.4、バッテリーグリップ、Sony 400mm f2.8 GMを付けた組み合わせより軽いのは確かです。それでも腕は、しばらくすると同じように重くなります。

ツバメが翼を高く上げ、二股の尾を見せて飛ぶ。背景はやわらかくぼけている
ツバメ – Sony A1 + TC 1.4 + 400mm f2.8 – 1/2500 + F5 + ISO5000 + 560mm

機材の重さ:

  • Sony A1 = 740g
  • Sonyバッテリーグリップ =290g
  • テレコンバーター = 167g
  • 400mm f2.8 GM = 2895g
  • 合計 = 4092g
  • Sony a6700 = 493g
  • Sony 200-600mm f5.6/6.3 G = 2115g
  • 合計 = 2608g

こうした難しさはありましたが、それでも自分としては見ごたえのある写真が何枚か撮れました。

最後にひとこと
私にとって一枚の写真は、そこに結びついた体験と同じだけの価値をもっています。どの写真にも、写っているもの以上の話があるのです。居心地のよい場所を出て、一見すると条件の悪い天気を生かすと、まったく新しい見え方が開けることがよくあります。そうした状況で得られる体験と写真は、いつもの晴れた日の一枚とは根本から違うものになります。

それでは次回まで、よい光がありますように。好奇心を持ち続けてください。