日本・静岡県の伊豆半島

オレンジ色の空、黒い木のシルエットと切り立った海岸を背にした海の日の出。日本、伊豆。
静岡県賀茂郡、伊豆半島の日の出 – Sony a7 R IV+ Tamron 28 – 75 mm f2.8 で撮影

およそ2,000万年前、伊豆半島は当時まだ海底火山の集まりで、太平洋の底にありました。火山の活動に加えて、何世紀にもわたる地殻の動きが、いまの伊豆半島の形をつくるうえで決定的な役割を果たしたのです。

東京から車でわずか二時間のところにある伊豆半島は、2018年にユネスコ世界ジオパークに認定されました。いまでは東京の人びとにとって身近な行楽地として親しまれ、その多彩な自然で人を引きつけています。水の上にも下にも、見つけるべきものが数多くあるのです。自然のなかで楽しめることが豊富にあるうえ、数々の自然の造形を眺められます。さらに伊豆に数多くあるのが、日本の名高い温泉です。

この半島には見事な植物と動物が暮らしています。スギや竹の混じる森から、サンコウチョウのような珍しい鳥まで。自然を愛する人なら誰でも、自分の好みに合うものが見つかるはずです。

写真を撮る人、とくに風景や野生動物を専門にする人にとって、伊豆半島は豊かな被写体を用意しています。太平洋から突き出す岩の造形をともなう美しい浜辺のような、興味深い地形がいくつもありますし、この地域でしか出会えない種もいるのです。

このWildeNaturは、名高いワサビを育てるうえでも最良の条件をそなえています。そのことが、伊豆半島をワサビのもっとも重要な産地のひとつにしています。

東京の南西にある伊豆半島を赤く示した日本の地図。OpenStreetMapの図。
この地図は私が図として手を加えたものです。もとにしたのは http://www.openstreetmap.org のスクリーンショットです – 著作権とライセンス

伊豆の植物と動物

この半島の森は、自然を愛する人にとってまさに楽園です。森のなかでは、ブナの美しさ、竹のやわらかな揺れ、イロハモミジの鮮やかな色、そしてスギの堂々とした姿を味わえます。伊豆半島の森は、ブナ、竹、スギ、イロハモミジの混じる混交林です。なかには樹齢千年に達するものもある見事なスギも、そこで眺められるのです。

伊豆の山の森にある、苔むした幹の巨大な古いスギ。手前に日本語の案内板と見学者。
Shiranuta no Ohsugi – 樹齢1,000年のスギ、高さ45m、幹まわり8.16m

絵のような竹林も、写真を撮る人にほかにない舞台を用意しています。竹の並ぶ調和のとれた姿に、きっと引き込まれるはずです。この地域は、森の多彩さと不思議さを息をのむ写真に収めるのにうってつけの場所です。

暖かく灯る行灯が並ぶ夜の竹林の道。日本、伊豆。
夜の修善寺の竹林の小径。ホタルを撮るのにもいい場所です

伊豆の動物たち

伊豆には、ドイツやヨーロッパでは出会えない、ほかにない種が数多く暮らしています。そのなかには心を引きつける鳥もいて、サンコウチョウ(Terpsiphone atrocaudata)、コジュケイ(Bambusicola thoracicus)、アオバト(Treron sieboldii)、ガビチョウ(Garrulax canorus)などが挙げられます。これらは伊豆の多彩な動物たちのほんの一例で、野生動物を撮る人なら誰でも心を動かされるはずです。

長い尾と青いアイリングをもつサンコウチョウ(Terpsiphone atrocaudata)のオスが、緑の森の枝にとまっている。日本、伊豆。
のどが赤茶色のコジュケイ(Bambusicola thoracicus)が、茂った緑の葉のあいだから用心深く見ている。日本、伊豆。
青い海を背に、海岸の岩にとまる緑と黄の羽と葡萄色の翼のアオバト(Treron sieboldii)。日本、伊豆。
緑を背に、枝の上でくちばしを開けて鳴くガビチョウ(Garrulax canorus)。日本、伊豆。

伊豆での野生動物撮影の道行きについては、旅の記事の続きで詳しく書きます。公開したら、ここにもリンクします。

長い触角と大きな複眼をもつ、緑に光るカミキリムシ(Cerambycidae)のマクロ写真。日本、伊豆。
昆虫の世界もとても多彩で、マクロ写真を撮る人にとっては楽園です。

伊豆半島の海のなか

伊豆は、水の上でも下でも自然を追いかける野生動物写真家にとって、いい環境です。海岸沿いで潜ったりシュノーケリングをしたりすれば、色とりどりの魚の群れに目を奪われます。潜る人には、シュモクザメ、トラザメ、そして堂々としたマンボウ(Mola mola)の姿を間近に味わう機会があります。ここで見つけられる種は、それだけにとどまりません。

青緑の水のなか、岩礁の上を泳ぐ多くの小さな青い魚と、一匹の大きな銀灰色の魚。日本、伊豆。
青い水のなか、カメラのすぐ前を泳ぐ二匹の銀灰色の魚。下にはぼんやりと岩礁。日本、伊豆。
青緑の水のなか、藻の生えた岩の上を泳ぐ桃色に光る魚の群れ。日本、伊豆。
伊豆の青緑の水のなか、藻の生えた岩にいる黄色い縞の二匹の魚。日本。

2018年からのユネスコ世界ジオパーク、伊豆

伊豆半島は地質のうえで並外れた意味をもち、風景も美しい土地です。2018年、ユネスコはこの半島を世界ジオパークに認定しました。数多くの活火山が形づくった、その目をみはる風景をたたえ、守るためです。しかし伊豆の魅力はそれだけではありません。ここは実際、活動する二つの火山列が交わる、地球上でも数少ない場所のひとつに数えられます。地質のうえで心を引く現象です。
国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)が世界の重要な地質の場所を守り、広めようと取り組むなかで、伊豆半島の世界ジオパークとしての位置づけは、その地質の値打ちがほかにないものであることを示しています。この半島は地球の歴史の生きた教科書として、私たちの世界を形づくってきた、そしていまも形づくっている力の動きを学び、理解するよう誘う存在です。

地質のうえでの特別さに加えて、伊豆半島の一部は富士箱根伊豆国立公園にも含まれます。この国立公園は風景の多彩さで知られ、絵のような湖や湿地から、富士山のふもとの息をのむ高原まで広がる公園です。

よく知られた火山

大室山(大室山、Ōmuroyama)
絵のような静岡県伊東市に、大室山が風景を見おろすようにそびえています。標高580mのこのスコリア丘が、伊豆東部火山群のなかから堂々と立ち上がっているのです。そして伊東市のほかにない象徴でもあります。毎年春になると、生きた作品へと姿を変えるからです。伝統の山焼きのあとに毎年芽吹く草が、この火山を鮮やかな緑に包みます。大室山は富士箱根伊豆国立公園で欠かせない見どころです。伊東市の人びとだけでなく、日本じゅうがこの火山の自然の美しさをたたえています。

天城山(天城山、Amagi-san)
天城の山々は、静岡県の伊豆半島中央部の風景を形づくる、堂々とした火山の連なりです。最高峰のBansaburōdakeは標高1,406mに達し、それにBanjirōdakeとTōgasayamaが続いて、それぞれ1,300mと1,197mの高さになります。天城の山並みは見事な地質の造形であるだけでなく、多彩な植物をもつ、自然を愛する人の楽園でもあるのです。

富士山( 富士山、Fuji-san)
富士山は伊豆半島に直接属してはいませんが、その上に堂々とそびえ、その姿で半島の風景を形づくっています。晴れた日には、半島の西から東までの山々から、堂々とした富士山の見事な眺めが開けるのです。そこからなら、この象徴的な火山の美しさを、その全景のまま味わえます。

低くたなびく雲の帯の上に出た富士山の火山の峰。手前に森におおわれた丘。日本。
天城の山並みから見た富士山

伊豆半島の見事な自然の造形

伊豆半島の見事な自然の造形が、世界じゅうから人を引き寄せるのです。古い火山と活動する地熱地帯が、自然の心を引く見せ場を用意しています。絵のような、そして荒々しい海岸線に沿って、隠れた入り江をともなう見事な岩の崖が続きます。海岸沿いには不思議な雰囲気の洞窟も見つけられ、風景を撮る人にとってはうってつけの被写体です。

河津七滝(河津七滝)の滝
河津川の水は天城の山並みを抜ける道すがら、七つの落差を越えていきます。そうしてできたのが河津七滝で、静岡県の伊豆半島中央部にある七つの滝です。高さ30mのOodaruから、わずか2mの小さなKanidaruまであります。高さ30mのOodaruから、たった2mの可憐なKanidaruまでが、心を引く自然の舞台です。

浄蓮の滝(浄蓮の滝、Jōren-no-taki)
伊豆市のYugashima地区に、浄蓮の滝が姿を見せます。静岡県の天然記念物であり、「日本の滝百選」にも数えられます。この滝は舞うような霧のとばりをつくり、不思議な空気で人を引き込むのです。
ここには絡新婦(絡新婦)の言い伝えがあります。美しい女に姿を変えて、獲物を絡めとることができるクモです。言い伝えのなかで、絡新婦は浄蓮の滝を支配しています。その住まいは轟く水の裏に隠れていて、巧みなクモの糸で、滝に近づきすぎた不用心な漁師を引き寄せるのです。絡新婦の言い伝えについては、こちらで読めます。絡新婦のウィキペディア

夏の緑の森に囲まれ、黒い玄武岩を越えて青緑の滝つぼへ落ちる浄蓮の滝。日本、伊豆。
黒い岩を絹のように流れ落ち、青緑の滝つぼへ注ぐ大滝。かたわらに柱状節理と紅葉。日本、伊豆。

荒々しい海岸と美しい浜辺

伊豆半島の海岸は50kmにわたって延び、火山の活動が形づくったほかにない風景をいくつも用意しています。東海岸の切り立った崖と轟く太平洋から、富士山を望む駿河湾の息をのむ夕日まで、この海岸そのものが心を引く舞台です。この海岸沿いのどの眺めも目を楽しませ、自然の力を映し出し、自然写真を撮る人には被写体の宝庫になります。

洞窟と海食洞

ユネスコ世界ジオパークの一部である伊豆半島の海岸は、太平洋が火山の岩に刻んだ堂々とした海食洞と洞窟に彩られた海岸です。この心を引く造形は見事な舞台であるだけでなく、人気の被写体でもあります。内からも外からも眺め、歩いてみることが可能です。

奥から光が差し込むTensodoの海食洞の岩の通路と、エメラルド色の水。日本、伊豆、Dogashima。
暗いTensodoの洞窟から、草の生えた天井の開口部ごしに曇り空を見上げる。日本、伊豆、Dogashima。
Tensodoの海食洞の天井の開口部から差し込む光と、青緑に光る水。日本、伊豆、Dogashima。

美しい浜辺と荒々しい海岸

青緑の海と岩の島を背に、砂に打ち上げられた根株。日本、伊豆。
曇り空の下、穏やかな波と草の生えた二つの岩の造形がある小石の浜。日本、伊豆。
石がひとつ置かれた明るい砂浜。その先に静かな海と、水平線の岩の島。日本、伊豆。

ワサビ田と棚田のあいだで

風景を撮る人は、伊豆ですばらしい被写体に恵まれます。ワサビ田と絵のような棚田が、いい撮影の機会をくれるのです。棚田の写真といえば、ふつうはベトナムのようなほかのアジアの国のものが思い浮かびます。それでも伊豆半島には自然の美しさがこれほど多彩にあって、三週間滞在しても撮る機会は尽きません。

森におおわれた丘と雲の空を背に、水面を映す濃い緑の水田。日本、伊豆。
水を張って光る曲線の棚田。奥に農家と山並み。日本、伊豆。
畑にびっしりと並ぶ、つやのあるハート形のワサビの葉。日本、伊豆。
森の谷の渓流のかたわら、石積みの棚につくられたワサビ田。日本、伊豆。

日本、伊豆半島での野鳥撮影の体験については、こちらの記事へ