HIKMICRO Lynx LH19 2.0 実写テスト:購入前に知っておきたいこと

実写テスト中の熱画像カメラLynx LH19 2.0 + A1 + Sony 400mm F2.8 GM OSS
実写テスト中の熱画像カメラLynx LH19 2.0 + A1 + Sony 400mm F2.8 GM OSS

ご注意:
この実写テストはノートPCやデスクトップでの表示に最適化しており、分量と写真点数の都合上、スマートフォンでの閲覧にはあまり向きません。

基本データ

  • モデル:HIKMICRO Lynx LH19 2.0
  • 使用フィールド:森林、風景、夜間の観察
  • 使い方:手持ち & 待ち伏せ撮影
  • 目的:動物を見つけ & 狙って撮影すること
  • テスト期間:冬から春にかけて、さまざまな条件下
  • 特筆すべき観察:スズメフクロウ、ハイタカ、アカギツネ、ホシムクドリの群れ

目次


なぜ野生動物撮影に熱画像カメラなのか

数か月前、熱画像カメラを購入しました。導入するかどうかは、その前の1年間ずっと考え続けてきたことです。動機は、動物をより確実に見つけられるのではないかという期待、そして野生動物と向き合う体験そのものを広げたいという思いでした。

ひと言でいえば、隠れているものを見えるようにすることです。

購入すると決めてからは、まずこの技術の基礎を学ぶ必要がありました。そうでなければ機種を選べないからです。

最終的な決め手になったのは、ネットで調べるうちに見えてきたHIKMICRO Lynx LH19 2.0の性能でした。位置づけとしては入門クラスの熱画像カメラです。競合機と比べて優れているのか劣っているのかは判断できません。ほかの熱画像カメラを使った経験がないからです。ただ、この技術が撮影をどう支えてくれるのか、どこに限界があるのかは報告できます。

熱画像カメラを使うのは、多くの場合ハンターです。彼らが探す動物は、たいてい小鳥よりも大きな相手になります。

この種の機器は、想定ユーザーも、構造や機能の大部分も、明らかに狩猟向けです。そのため最初は、自分の用途に本当に見合うのか判断がつきませんでした。予算も大きくかけたくなかったので、入門機で用が足りるのかという疑問も残りました。


テスト機材の概要 HIKMICRO Lynx LH19 2.0

Hikmicroの熱画像カメラLynx LH19 2.0
Hikmicroの熱画像カメラLynx LH19 2.0

熱画像カメラLynx LH19 2.0は、HIKMICRO社の入門機です。調べた範囲でいちばん納得できたのは、価格に対する性能のバランスでした。

技術仕様(メーカー公表値):HIKMICRO LYNX LH19 2.0

  • センサー:384 × 288 px
  • ファインダー(ディスプレイ):1024 × 768 px
  • フレームレート:50Hz
  • 焦点距離:19mm(フルサイズ換算で約150mm相当の画角)
  • NETD:< 20mK
  • 絞り:F1.0
  • 検知距離:900m
  • 基本倍率:1.8倍(フルサイズ換算で約150mm相当の画角)
  • デジタルズーム:1×、2×、4×、8×
  • 熱画像表示:White Hot、Black Hot、Fusion、Red Hot
  • 視度調整:あり
  • 距離計:あり
  • 静止画記録:あり
  • 動画記録:あり
  • WLAN/アプリ対応:あり
  • バッテリー駆動時間:6.5時間
  • バッテリー種別:内蔵リチウムイオン充電池
  • 内蔵メモリー:16GB
  • インターフェース:USB-C
  • 保護等級:IP67
  • 質量:282g(バッテリーを除く)
  • 外形寸法:172.5 × 56 × 60.8mm

技術データについては、最初の記事「熱画像カメラと野生動物撮影?」で詳しく書いています。


テスト条件 & 方法

最初の実写テストでは、さまざまな自然環境を歩きました。森の中、開けた土地、湖のある場所とない場所、暗い時間帯と日中の両方です。

熱画像カメラの使い方は、次の二通りです。

  • 手持ちで歩きながら。ハンターが通常行うやり方です。
  • カメラと望遠レンズの上に固定して。当初から思い描いていた形です。

あわせて、熱画像のライブ伝送スマートフォンタブレットへ飛ばし、屋外で試しました。知りたかったのは、隠れている野生動物を可視化できるのか、そしてそれが野生動物撮影で優位につながるのかという点です。たとえば待ち伏せ撮影の最中、肉眼では見えない動物が目の前のどこにいるのかを把握するためです。

ロケハン、つまり初めての自然環境を下見して分析する作業でも同じです。生息環境をより正確に読み、撮影プロジェクトを的確に組み立てるためです。


観察できた動物

このテストレポートで扱うのは、偶然とらえた動物と、見つけたうえで狙って撮影できた動物の両方です。驚かされた場面もいくつかありました。多くの小鳥と哺乳類を観察できましたが、なかでも大きな収穫は、スズメフクロウを狙って撮影できたことです。

求愛期のスズメフクロウ

大きな収穫のひとつが、夜明けの薄明かりのなかで交尾するスズメフクロウを目撃できたことです。熱画像カメラがなければ、まず気づけませんでした。

上の動画では、スローモーションのおかげで交尾の様子がよく分かります。カメラでも記録できましたが、まだ非常に暗く、F2.8でも光量が足りませんでした。露光時間は1/20秒、F2.8、400mmです。写真にスズメフクロウの交尾は写っているものの、当然ながらほとんど見て取れません。
上の動画では、スローモーションのおかげで交尾の様子がよく分かります。カメラでも記録できましたが、まだ非常に暗く、F2.8でも光量が足りませんでした。露光時間は1/20秒、F2.8、400mmです。写真にスズメフクロウの交尾は写っているものの、当然ながらほとんど見て取れません。

ホシムクドリの目覚めと、隠れた狩人

葦原のホシムクドリは、熱画像カメラを試すうえで格好の相手でした。
興味深いのは、葦の中にいるあいだは熱の反応がまったく出ないことです。飛び立つ準備に入り、葦の高い位置へ移ったところで、ようやく姿が浮かび上がります。
それまでは葦が熱の放射を完全に覆い隠しているわけです。




森の幻影を暴く

よく晴れた朝のロケハンで、日光浴と巣づくりをするハイタカのつがいを見つけました。
この警戒心の強い鳥に出会えたのは、それまで2回だけです。1回はミサゴが「森の幻影」を攻撃した場面でした。ミサゴの巣に近づきすぎたからです。もう1回は遠く離れた木にとまっているところで、このときも熱画像カメラで見つけました。
今回は運もありました。熱画像カメラで周囲を丹念に探ったことで、すぐ近くに隠れていた2羽を突き止められたのです。




足音を立てずに

森でのブラインド撮影でスズメフクロウを待っていたとき、アカギツネが1匹、道沿いを歩いて視界を横切りました。
熱画像(1枚目、緑の印)にも何かがいることは映っていましたが、この距離ではアカギツネなのか別の哺乳類なのか、はっきりとは判別できません。

フィールドでの実践

すでに触れたとおり、最初は熱画像カメラを手持ちで使っていました。本来の狙いは撮影機材と組み合わせることです。a) 2台の利点を同時に引き出せること、b) 熱画像カメラで見つけた瞬間に、撮影機材がすでに被写体へ向いていて、すぐ撮れる状態にあることの2点が目的でした。

もうひとつの利点があります。両手を空けておけば、状況に応じてすぐ動けます。熱画像カメラには三脚座、一般的なカメラと同じネジ穴が備わっています。これを使わない手はないと考え、フォトカメラと熱画像カメラを一体化する発想にたどり着きました。

目指したのはオールインワンの解決策です。野生動物撮影では、機材が増えるほど設営も取り回しも手間が増えます。夜間はとくに厄介ですし、持ち運ぶ重量が増える点も見過ごせません。そこで、ひとつのセットアップにまとめる現実的な方法を考えました。まずは手持ちの機材でどこまでできるかを試し、半分ほどは形になりましたが、完成させるにはいくつか部品を買い足す必要がありました。

完成したセットアップ

操作性 & エルゴノミクス

携行性 & 重量

片手で操作できる、コンパクトな熱画像カメラLynx LH19 2.0
片手で操作できる、コンパクトな熱画像カメラLynx LH19 2.0

熱画像カメラは比較的コンパクトで(172.5 x 56 x 60.8mm)、重さは約300gです。必要ならジャケットのポケットにも収まります。手にした印象は軽快で、操作もしやすく感じました。

主要な操作、メニュー、ズーム、静止画と動画の記録、熱画像表示の切り替えは、いずれも片手で無理なくこなせます。ただしこれは主観的な評価です。手が大きいので握りやすく、どのボタンにも問題なく指が届きます。
不安がある場合は、オンラインではなく実店舗で買うほうがよいでしょう。手に合うかどうかを、その場で確かめられるからです。

ファインダーの表示と見やすさ

ファインダーの解像度は高く(1024×768 px)、距離に応じて見え方は変わるものの、対象の輪郭はしっかりつかめます。注意したいのは、ファインダーの解像度が熱画像カメラのセンサー(384 x 288 px)より高いことです。そのため記録した動画や静止画をPCのモニターで開くと、ファインダーで見た印象ほどきれいには映りません。
メニューの表示と階層も整理されていて、ほぼ直感で分かります。一部のアイコンはすぐには意味を取りにくいものの、取扱説明書で確認できます。

バッテリー駆動時間 & 消費電力

メーカー公表のバッテリー駆動時間は6.5時間で、使ってみた実感ともほぼ一致します。
ただし実際の持ちは、使い方によって大きく変わります。

  • 手持ちで歩きながら、ときどき周囲を確認する程度の使い方なら、バッテリーは6時間以上持ちます。
  • ライブ映像を流し続ける場合の駆動時間はおよそ3〜4時間です。
タブレットへのワイヤレス・ライブ伝送(ケーブルはモバイルバッテリーに接続)
タブレットへのワイヤレス・ライブ伝送(ケーブルはモバイルバッテリーに接続)

とくに興味深かったのは、-5℃の冬の朝に行ったテストです。熱画像カメラを動かしたまま、数時間ブラインドで座り続けました。低温にもかかわらずバッテリーは4時間近く持ち、終了時点でも完全には空になっていません。あと30分は動いたかもしれませんが、これは推測にすぎません。メーカーの数値は誇張ではなく、実感とも合っています。

バッテリー室を開けた状態のHikmicro LH19 2.0熱画像カメラ。バッテリーは装着済み
バッテリー室を開けた状態のHikmicro LH19 2.0熱画像カメラ。バッテリーは装着済み

バッテリー交換も比較的簡単です。側面のバッテリー室は位置がよく考えられています。ひとつ惜しいのはバッテリー室のフタで、閉めるときに少し引っかかります。減点対象ではありますが、購入を見送るほどではありません。バッテリーは2個付属するので、使い方と外気温にもよりますが、8〜12時間の連続運用が可能です。

毎日1時間ほど散策する程度の使い方なら、満充電が何日も持ち、充電のことを気にせずにすみます。


画質 & 性能

検知距離 & 精度

すでに書いたとおり、熱画像カメラの主な用途は狩猟で、設計もそこに合わせてあります。画角は望遠寄りで、中距離から遠距離の哺乳類を観察し、種を見分けるには理想的です。ただし私の用途は野生動物撮影なので、意識して「広角寄り」のモデルを選びました。とはいえ広角の視野が得られるわけではありません。この機種で得られる画角は、先に書いたようにフルサイズ機の150mm相当です。

実際に使って分かったこと

現場では、焦点距離がもう少し広角であってほしいと感じました。半径10mほどの範囲をまるごと視野に入れたい場面ではとくにそうです。残念ながら、この価格と性能の帯には、妥協なしでより広い視野を得られる機種がありません(ピント調整がない、機能が絞られているといった制約が付きます)。これは私が探していた時点の状況で、今後は変わるかもしれません。

それでも私の用途にはHIKMICRO Lynx LH19 2.0がよく合っています。とくに約200mまでの中距離域で力を発揮します。それより遠い動物がまったく見えなくなるわけではありませんが、得意なのは明らかに中距離です。メーカーはLynx LH19の検知距離を900mとしています。この数値自体は確認できました。ただしその距離では、種の判別はかなり難しくなります。

近距離と遠距離での使い勝手

Lynx 19 2.0の視野範囲を示した図
Lynx 19 2.0の視野範囲を示した図

最短検知距離(約2mまで)

近距離では、手前の空間を意識して探る必要があります。視野を四つに区切り、方向を決めて順に追っていくやり方が確実です。本機の最短検知距離は約2mです。

遠距離

中距離から遠距離では、小型から中型の動物の動きは分かります。ただし種まで結びつけるのは難しくなります。小鳥なのか哺乳類なのかは判断できても、それがどの種かまでは届きません。哺乳類は体が大きいぶん、いくらか楽です。それでも遠くの林道を横切っているのがアカギツネなのかノロジカなのかを見分けるのは容易ではありません。メーカーの説明もまさにこのとおりで、公表内容と実際の性能は一致しています。

熱画像表示 & 目を慣らすこと

自分で身につけるしかなかったのが、熱画像の読み取り方です。熱源がどう描かれるのか、表示モードによって何が変わるのかを理解するには、目を慣らす時間が要ります。

例を挙げます

小鳥は体が小さく、見つけにくい相手です。まわりに植物のような別の熱源があり、姿が「埋もれて」しまう場合はなおさらです。使い込むうちに、とくに役立つ表示モードが二つあると分かりました。

  • Fusion
  • Black Hot

この二つなら、小さな動物が周囲からくっきり分かれて見えるので、いちばん見つけやすくなります。
下にある表示モード別のギャラリーを見ると、「Red-Hot」が最良の選択に思えるかもしれません。大きな対象ではそのとおりですが、小さな鳥がある程度離れている場合、赤い面として描かれるほどの熱は放射されません。

次のギャラリーでは、本機の四つの熱画像表示をすべて紹介します。撮影シーンはどの表示でも同一です。林道に立つ人物が写っており、この場面ではその人物がもっとも温度の高い点になります。




解像度 & 描写の細かさ

熱画像カメラの解像度と描写力は、通常のフォトカメラと比べられるものではありません。画質は相対的に低く、そのまま高品位な写真や動画の撮影に使える機材ではありません。高解像度の熱画像を残したい場合は、ハイエンド機を選ぶことになります。

もともと本機で写真や動画を残すつもりはありませんでした。あくまで動物を観察するための道具という位置づけです。ところが数週間使ってみると、熱画像を意図して作品に取り込む発想には確かな魅力があると感じます。自然をまったく別の角度から見せてくれますし、独自の美しさを備えた画が撮れるからです。

ただしこの用途にHIKMICRO LYNX LH19 2.0が向いているとは言い切れません。解像度が足りないためです。ファインダーの映像は、記録されたデータよりもはっきり高精細に見えます。ファインダー側の解像度が高い一方で、記録はセンサーの低い解像度のまま保存されるからです。

  • センサー:384 × 288
  • ファインダー(ディスプレイ):1024 × 768 px

現場での運用に限れば、この点はさほど気になりません。あとからノートPCで見返すときには、もう少し高い解像度がほしくなりますが。

さまざまな温度条件下での性能

この点について、いまはまだ十分な評価を出せません。テストの大半を低温下で行ってきたためです。

強み & 制約

野生動物撮影での大きな利点

最終的な結論を出すのはまだ先です。さまざまな条件(フィールド、季節など)で裏づけのある判断を得るために、最低12か月という期間を自分に課しています。

現時点で言えることがあります。熱画像カメラを買うという判断は、まちがいなく正しかったと感じています。以前よりさらに早い時間にフィールドへ出たくなりました。これまで完全に見えていなかったものを、いま観察できるからです。

これまでの運用でも、想像していなかった出来事に立ち会えました。

具体例を挙げます。スズメフクロウを狙ったブラインド撮影では、ロケハンの段階でも本番でも、熱画像カメラが大きな助けになりました。これがなければ、写真を撮ることも、交尾を観察することもできなかったはずです。忘れがたい体験になりました。

想定される弱点 & 課題

これまでのところ、歩き回りながら使う運用は限定的にしか役立たないと分かってきました。一方で、森の樹洞を狙って探すような使い方はよく機能します。本当の強みが出るのは、やはり待ち伏せ撮影で「視野の拡張」として周囲を読むときです。ブラインドでは環境が変わらないため、一定の景色のなかに生じた変化を早く見つけ、正しく結びつける道具として働きます。

視野による制約

主な原因は焦点距離、言い換えれば画角にあります。理想は視野を変えられる光学系で、超広角から現行のHIKMICRO LYNX LH19 2.0の画角までをカバーできるものです。現行の画角はフルサイズ機の150mm相当にあたります。デジタルズームは最大8倍まで使えますが、解像度の劣化が大きく、私の用途では実用になりません。

鳥 & 小型動物の検知

White Hotの熱画像。森の低木にとまる小鳥を赤い印で示しています
White Hotの熱画像。森の低木にとまる小鳥を赤い印で示しています
  • 離れた場所の小鳥は、環境や幹などの熱源しだいではあるものの、動いていればよく分かります。じっととまっていると、周囲に溶け込んでしまうことが多くなります。
  • クロウタドリほどの大きさから上の鳥なら、はっきり見て取れます。
  • 待ち伏せ撮影では、近距離でじっとしている小鳥を見つけるのが難しくなります。望遠寄りの画角で探し続けると、目がすぐに疲れてしまうからです。

最適な使用シーンと補完する機材

これまでの経験からは、次のように整理できます。

待ち伏せ撮影での強み

ブラインドでカメラを一定の範囲に向けておくと、動きや変化にすぐ気づけます。熱画像カメラの明確な強みは、視野を固定して使う場面にあると考えています。

手持ち運用の限界

歩きながらの運用でも、小鳥ほどの大きさまでなら見つけること自体は問題ありません。問われるのは、そこに何を期待するかです。単に見つけたいだけなら十分こなせます。

一定の温度を示す樹洞を探し出し、鳥が使っている手がかりを得たい場合も、かなりよく働きます。

ただし歩きながらの運用は、続けるほど負担が大きく感じられます。景色が絶えず変わり、熱の構造も変わり続けるため、目の疲れが早いのです。なお手持ちで使っても、映像そのものは安定しています。

撮影との組み合わせ

観察だけでなく狙って撮影もしたい場合は、2台をどう並行して扱うかを考えておく必要があります。撮影の経験がある方なら分かるはずです。良い結果を求めるなら、集中してこなせるのは常にひとつだけです。だからこそ熱画像カメラを撮影機材と一体化しました。

こうすれば、熱画像カメラとフォトカメラを手間なく同じ一点へ向けられます。2台を別々に持ち替える必要がなくなり、扱いはぐっと簡単になります。

熱画像カメラは照準器のように使っています。天体望遠鏡のファインダースコープに近い感覚です。熱画像カメラをのぞいて向きを合わせると、フォトカメラのレンズも同時に動きます。対象を見つけたらそのままフォトカメラのファインダーへ移れるので、時間を失うことも、被写体を探し直すこともありません。熱画像カメラは動画記録にしておくことが多く、観察の全体がそのまま記録として残ります。

季節による違い

これから徹底的に確かめる必要があるのが、季節による違いです。検知やバッテリーの持ちに目立った傾向や制約が出るのかどうかは、まだ未知数です。先に触れた気温差との関係も、その一部にあたります。

冬は最良の条件か

冬がもっとも良い結果を出すと見ています。理由は次のとおりです。

  • 環境そのものの温度が低いこと
  • その結果、動物や物体の熱の反応がよりはっきり見えること

夏は難しくなるのか

夏は条件が悪くなる可能性があります。

  • 気温と周囲の温度が上がると、対象どうしの差が出にくくなるおそれがあること
  • 夜も暖かくなるため、環境と動物のコントラストが下がりうること

この点は、夏のあいだに確かめていきます。

日中の運用

日中は、日陰の多い森でとくによく使えました。ただし温度差を正しく読むには慣れが要ります。水面ではなおさらです。

すべてのフィールドで日中の運用が有効というわけではありません。

例を挙げます。ある採石場でワシミミズクを探していたときのことです。この鳥は保護色に守られ、肉眼で見つけるのは容易ではありません。ところが熱画像カメラでも問題が起きました。岩壁自体が熱を蓄えて放射するため、動物との境目が出ないのです。こうした環境で使うことが原理的に不可能だという意味ではありません。ただ、これまでの経験では、採石場はこの技術にとって最適な条件とは言えません。

まとめ & 評価

野生動物写真家にとって、この投資は見合うのか

現時点での答えは明快です。この投資は正しい判断でした。ただし長期運用での強みと弱みを最終的に評価するには、もう少し使い込む必要があります。動物を観察するという役割に加えて、熱画像カメラは自然に触れる体験そのものを豊かにしてくれました。誇張ではなく、いまはどの撮影行にも必ず持ち出しています。

適した用途 & 対象読者

熱画像カメラの購入を考えている方は、カメラを買うときと同じ問いを立ててみるとよいでしょう。「これで具体的に何をしたいのか」という問いです。

観察と発見が目的なら、有力な選択肢になります。ただし機種によって制約がある点は押さえておきたいところです。

熱画像カメラが向いているのは

一般的な動物観察者の場合:

  • 肉眼では見つけにくい動物を探し出す手段として有効です。

ブラインドで待つ野生動物写真家の場合:

  • 位置を固定し、特定の環境を継続して観察する用途でとくに役立ちます
  • フォトカメラと熱画像カメラを一体化したセットアップ(三脚を使う形など)と組み合わせれば、性能を最大限に引き出せます

バーダー(野鳥観察者)の場合:

  • 入門機はおそらく最適ではありません。種を同定するには描写の情報量が足りないことが多いためです
  • 描写の細かい上位クラスの熱画像カメラなら、野鳥観察者や鳥類学者にとって検討する価値があります

手持ちでの運用(忍び歩き、ハイキング)の場合:

  • 可能ではありますが、作業の流れによっては使いにくくなります
  • 熱画像カメラとフォトカメラを同時に扱うと、慌ただしく扱いづらくなることがあります

私にとって本機の最大の強みは、ブラインドや固定した場所から周囲を意図的に探り、観察できることです。撮影機材と組み合わせているので、意識は撮影そのものに集中できます。


想像と現実

買う前は、熱画像カメラを持って景色のなかを歩き、のぞけば動物の隠れ場所がすぐ分かるものだと思っていました。現実はそれほど単純ではありません。もちろん機材の質による部分は大きく、ハイエンド機なら入門機より速く良い結果を出すはずです。それでも最良の成果が得られたのは、環境の変化を細かく感じ取れるブラインドでの撮影でした。

代替手段

熱画像カメラだけで発見と観察を完結させようとすると、期待外れに終わるかもしれません。あくまで補完する道具であり、ほかの機材の代わりにはなりません。

有効な代替手段や補完機材:

双眼鏡またはフィールドスコープ

  • 動物を見つけるだけでなく種まで判別したい場合は、双眼鏡かフィールドスコープ、あるいは望遠レンズを付けたカメラが別に必要です。
  • とくに日中の観察では、質の高い双眼鏡のほうが熱画像カメラより良い投資になる場合が多くあります。

薄暮性能の高い双眼鏡:

  • 光量の乏しい条件でとくに役立ち、熱画像カメラがなくても動物を確実に見つけられます。
  • 入門クラスの熱画像カメラより描写が細かく、情報量も多くなります。

補助機材としての熱画像カメラ:

  • 光学機器が限界を迎える夜間の運用に最適です。
  • 本番の撮影前に動物と環境を読んでおきたい写真家にとって、理想的な補完機材になります。

FAQ 野生動物撮影における熱画像カメラのよくある質問

1. 野生動物撮影の初心者に熱画像カメラは向いていますか

発見のための補助として使うなら、向いているとも向いていないとも言えます。ただし野生動物撮影を始めたばかりの段階では、まず撮影そのものに集中するほうがよいでしょう。

2. 熱画像カメラで高品位な写真は撮れますか

限定的です。解像度は写真や動画の高い品質には届かないことが多く、この点は機種にもよります。

3. 日中の使用にどれだけ意味がありますか

森の日陰ならまだ許容範囲です。真昼の直射日光下や、全般に暖かい環境では難しくなります。

4. 野生動物撮影で熱画像カメラとカメラのセットアップを組み合わせると何が得られますか

二つの技術を併用すると、ロケハンの精度が上がり、光の乏しい薄明のうちから動物を見つけられます。自然に触れる体験そのものも、より濃いものになります。

5. HIKMICRO LYNX LH19 2.0でよく見分けられる動物は何ですか

距離しだいです。LYNX LH19 2.0が力を発揮するのは、およそ250mまでの中距離域です。検知が成立する最大距離は900mとされています。アカギツネほどの大きさから上の哺乳類なら、そこでも見分けられます。小鳥は難しく、遠ざかるほど厳しくなります。飛んでいる鳥であれば、小鳥でもワシでもよく捉えられます。

6. HIKMICRO LYNX LH19 2.0は入門クラスの熱画像カメラですか

入門クラスです。それが良い結果を出せないことを意味するわけではありません。LYNX LH19 2.0に高解像度の写真や動画を求めないのであれば、動物の観察と発見に十分応える確かな道具になります。性能面でさらに上を求める場合は、ハイエンド機に目を向けることになります。